相続と不動産~③相続時の土地の分割方法とは?
遺産に土地が含まれる場合、相続人の間で遺産をどのように分けたら良いのか悩んだり、揉めたりすることは少なくありません。土地の利用状況等を踏まえながら最適な方法を選択して遺産分割を行うことが大切です。そこで今回は、遺産分割方法の種類と特徴、遺産に土地が含まれる場合の遺産分割のポイントを解説したいと思います。
遺言書が残されておらず、相続人が複数人いるケースでは、遺産の分け方を相続人同士で話し合って決めなければなりません。
預貯金や土地等、遺産には様々な財産が含まれるので、相続人の状況や遺産に含まれる財産の種類に応じて遺産の分け方を決めていく必要があります。
|遺産分割の方法は4種類
遺産分割の方法には、大きく分けて次の4種類があります。いずれの方法にもメリットとデメリットの両方があるので、それぞれの遺産分割方法の特徴を理解しておくことが大切です。
|現物分割
遺産をそのままの形、つまり現物で分割する方法です。例えば、遺産である土地を相続人2人で分筆して分けるケースが現物分割に当たります。
遺産をそのままの形で受け継ぐことができ、換価分割のように売却等の手間がかからない点が現物分割のメリットです。
ただし、分割が難しい財産が遺産に含まれる場合には、相続人間で公平に分けることが難しく、適しません。広大な土地を分筆して平等に分けられるケースもありますが、土地を1人の相続人が相続してしまうと、他の相続人の取得分が少なくなるケースも多くあります。そのため、土地が遺産に含まれる場合は、他の分割方法を選択することも多くあります。
|代償分割
ある遺産を特定の相続人が相続する代わりに、代償として他の相続人に現金等を渡す方法です。例えば、相続人である兄弟2人が遺産を分ける際、3千万円相当の土地を兄が、現金1千万円を弟が相続し、兄が弟に自分の資産の中から現金1千万円を渡すケースが代償分割にあたります。
最終的に受け取った財産額が兄弟ともに2千万円となって公平性を保てる点と、大切な遺産をそのままの形で相続できる点が代償分割のメリットです。
ただし、弟に渡す現金1千万円を兄が持っていることが前提となります。代償として渡せる資産がなければ代償分割はできません。また、遺産に土地が含まれるケースで代償分割をする場合、土地の評価額が争いになることも、少なくありません。
|換価分割
遺産を売却して得た現金を相続人で分ける方法です。例えば、土地を売却して現金化するケースが換価分割に当たります。
遺産を現金にすれば、相続人の間で平等に分けることができます。代償分割と違って、代償として渡す資産を準備する必要がないことや、土地の評価額についての争いを回避できることがメリットです。
ただし、大切な遺産を現物のまま残せないことや、遺産の買い手が見つからないと、そもそも換価分割ができないことがデメリットです。
|共有分割
共有分割とは、遺産を複数の相続人の共有名義にして相続する方法です。例えば、遺産に土地が含まれる場合は、その土地を複数の相続人が共同で所有することができます。
換価分割のように売却の手間は掛からず、代償分割のように代わりの資産を渡す必要もなく、平等に相続することができますが、土地を共有にしてしまうと、売却や建築をする際に共有者全員の同意が必要になります。売却をしたいのに一人でも反対する人がいると手続が進まず、後々問題となってくるかもしれません。
|遺産分割のポイント
◇土地が広くて分筆できる場合は「現物分割」の選択も
遺産に含まれる土地の面積が広く、建物が立っていない更地であれば現物分割が可能です。分筆しても各土地を有効に活用できそうな場合は、現物分割を選択しても問題ありません。
逆に、分筆後の土地の面積があまりに狭くなるようなケースでは、利用価値や売却価格が下がるリスクがあるため注意が必要です。このような場合には、土地の価値を下げずに済む他の遺産分割方法を検討することをお勧めします。
◇特定の相続人が居住する場合は「代償分割」を行う
遺産に土地と建物が含まれ、故人と一緒にそこで暮らしていた相続人がいる場合は、引き続き生活するためにその相続人が土地も建物も相続するのが一般的です。
ただし、他にも相続人がいる場合は、不動産を相続した人の取得額が大きくなり、他の相続人と不公平になることも少なくありません。相続人全員が納得すれば問題ありませんが、そうでない場合は、相続人間の公平性を維持するために代償分割を行います。
なお、代償分割を選択する場合であっても、代償として現金を渡す相続人は、相続後のご自身の生活に支障がないかどうかも含めて検討するようにしなければいけません。
また、遺産である土地建物で暮らしていた配偶者は、土地建物の所有権は相続せずに、配偶者居住権を取得する方法も考えられます。配偶者居住権とは、故人の配偶者が自宅に住み続けられる権利です。もっとも、配偶者居住権を設定すると、実質的に不動産の売却ができなくなる点には注意が必要です。
相続した不動産に住み続けるのか、将来売却する可能性があるのか、ご自身のライフプランに照らし合わせながら相続方法を検討する必要があります。
◇住む予定がなく土地を手放しても良ければ「換価分割」を行う
例えば、親が亡くなって子が相続をする場合は、子が実家を離れて遠方で生活していると、住む予定のない土地や建物を相続しても困ることは少なくありません。そのため、土地や建物を手放しても良いと相続人の方が考えるのであれば換価分割を選択します。
ただし、その土地や建物がある場所によっては、そもそも買い手が見つからず換価できないこともあるので注意が必要です。換価分割を選択する場合には、いくらで売却できるのかを事前に確認するようにしましょう。
◇土地の「共有分割」は避けたほうが良い
先ほど紹介したように、土地を共有状態にすると、売却するにしても建物を建築するにしても共有名義者全員の同意が必要になります。
そのため、土地の有効活用の妨げになることも少なくありません。活用できないまま所有するだけのリスクもでてくるため、土地の遺産分割方法は他の3つの方法から選択することをお勧めします。
遺産分割の方法には、「現物分割」、「代償分割」、「換価分割」と「共有分割」の4つの方法があり、土地の遺産分割においてもいずれかの方法を選択することになります。それぞれの遺産分割方法の特徴を理解して、相続が起きたときの状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。
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