古屋付きでの不動産売却~戦略とポイント~
先日、古屋付きでの不動産売却のメリットデメリットをお伝えしましたが、今日は古屋付きで売却するときのポイントなどをお話ししたいと思います。
そもそも、新築信仰が根強い日本では、築古物件が売れにくい傾向にあります。
日本は新築物件の流通戸数が圧倒的に多く、中古物件の流通はわずか全体の10%です。これは、フランス約60%、米国約80%、英国に至っては90%近くが中古物件の流通であることを考えれば、非常に少ないといえます。
日本では、新しいものを好む国民性もさることながら、建築物の耐震性等の問題や耐用年数の制限があるため、税制面からも新築に人気が集まっているようです。
特に、木造や軽量鉄骨造の、法定耐用年数を大きく上回る「築30年超」の古家を売却するには工夫が必要です。築30年超の物件を上手に売却するには、その価値を正確に把握して売却のための戦略を立てなくてはなりません。
|構造や材質による築古物件の価値の違い
「築30年超」という言葉を聞くと、多くの人は「売れないか、売れてもタダ同然」というイメージを抱くかもしれません。新築時を頂点に建物の価値が下落していく日本では、確かにその考えは間違いではないです。しかし、築30年とは言っても、構造や材質によってその価値はさまざまなのです。
一般的に建物の価値を測る基準として「法定耐用年数」があります。法定耐用年数は、資産を減価償却できる年数を定めた、国税庁による税務処理上の決まりです。この法定耐用年数は、建物の構造・材質によって以下のように決められています。
・木骨モルタル造……20年
・木造……22年
・金属造(骨格材の肉厚3mm以下)……19年 ※一般的に軽量鉄骨造はこれに該当
・金属造(骨格材の肉厚3mm以上4mm以下)……27年
・金属造(骨格材の肉厚4mm以上)……34年
・れんが、ブロック造……38年
・鉄骨鉄筋コンクリート造……47年
このように構造によって法定耐用年数は大きく変わり、木造と鉄骨鉄筋コンクリート造の間には2倍以上の差があるのです。日本では「法定耐用年数=建物の寿命」として考えられる風潮があることから、築30年といっても木造と鉄骨鉄筋コンクリートでは全く価値が変わってきます。
|耐用年数にとらわれない中古住宅の価値
法定耐用年数は、実は単なる税務処理上の数字ともいえます。つまり、「実際に建物がどれくらい使えるのか」という観点から算出された数字ではないのです。では、建物の寿命は一体どの程度なのでしょうか。
例えば、木造住宅はモルタル造で20年、サイディングを使った木造で22年とありますが、実際の街中を見てみると、これより更に築年数の経った建物が現役として使われていることが分かると思います。
築50年を超える様な建物がリノベーションされ、「古民家」として人気を集めている状況もあります。
それでは、実際の耐用年数はどれくらいかと言うと、築80年、あるいはそれ以上の利用が可能なのではないでしょうか。
ただし、この耐用年数は適切なメンテナンスがあってこその年数です。
木造住宅は構造部分が水に強い訳では無いので、外壁塗装などのメンテナンスをしっかりとしなければ、早く傷んでしまいます。 また、シロアリの害にも注意をしなければなりません。
木造住宅の維持には、定期的なメンテナンスが必要なのです。
マンションなどでも、修繕やメンテナンス次第で建物の状態が大きく変わってきます。計画に基づいて適正に点検・修繕を施していれば、築30年を超えても何ら問題のない物件も少なくありません。
日々の清掃や計画的なメンテナンスを怠らなければ、築30年の住宅でも売れる可能性は十分にあるのです。
|実際に築30年超の物件を売却するためのポイント
1. 土地とのセットを強調し、割安感を出す
まず、「建物・土地のセット」を強調することで割安感を出しましょう。具体的には、土地面積、立地、形状などの土地そのものの価値を最大限にアピールし、買主さんの興味を引きつけるといいでしょう。特に日本では上物(建物)よりも土地の価値を重視する傾向にあるため、「土地付き一戸建て」が好まれます。
2. リフォーム・リノベーションで古さを感じさせない
さらに、リフォームやリノベーションを施工すれば、単に経年劣化を修復するだけでなく、新たな価値を付け加えることもできます。特に水回りの劣化は気にする人が多いので、清掃やメンテナンスによって、状態に不安がないことを打ち出せれば、購買意欲を高める大きな要因になります。
3. 外観(外壁)、内装、水回りのメンテナンスを徹底する
外壁・内装といった目に見える箇所に適宜メンテナンスを施して美しさを保っていれば、築年数以上の価値をより高められるでしょう。
4.販売時の広告で上記ポイントや付加価値を最大限に訴求する
一方、販売時にも、築年数と価格以上の価値・魅力を理解してもらえるような広告づくりができれば、購買意欲の掘り起こしにつながるります。「古さ」や「不安」といった点をいかに「安心感」や「割安感」に変えるかが重要です。
|売らずに放置するリスク
「どうせ売れないだろうから……」と土地ごと築古物件を放置するのは、維持コストや税制面から不利になる可能性があります。
住宅用地にかかる税金には「住宅用地の特例による軽減」があり、これは同じ土地であっても住宅用地であれば、固定資産税や都市計画税が減額されるという制度です。例えば、住宅1戸あたり200平方メートル以下の住宅用地(小規模住宅用地)であれば、固定資産税の課税標準は6分の1、都市計画税は3分の1に減額されます。1戸あたり200平方メートルを超える住宅用地(一般住宅用地)については、固定資産税の課税標準は3分の1、都市計画税は3分の2に減額されます。
ところが、古い建物を居住せずにそのまま放置していると「特定空家」に指定され、さらに適正な措置を怠ると、これら税制上の軽減措置が受けられなくなります。そうすると、固定資産税や都市計画税が高くなってしまうのです。だからといって、取り壊して更地にしてしまうと、軽減税率の対象外(住宅用地ではないとみなされる)となり、やはり税コストが上がってしまうため得策とは言えません。これらのリスクを考えると、何もせず放置している様な状況ならば、「売れるうちに売却する」のが賢い選択といえます。
国の政策として、優良なストック住宅の流通促進が進む中、今後中古住宅の需要はより高くなっていくと期待されています。
築年数が古い住宅の売却の可能性を高めるためにも、日頃から手をかけて大切に住んでおくことが何よりも必要です。
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