不動産の売却において不動産会社選びは売却の成否を左右する重要な要素です。
なぜなら、不動産会社により購入・売却はもちろんのこと、不動産の種類や状況などの得意領域が異なるからです。そのため、どの不動産会社に相談してよいかがわからない、という人は少なくありません。
とりわけ、相続により取得した不動産の売却となれば専門的な知識と経験が必要であるため、不動産会社選びは慎重に行いたいところです。
そこで、相続により取得した不動産を売却した事例を3件ご紹介します。
相続した不動産を売却するときなど、不動産会社選びの参考にお役立てください。
これより、相続した不動産の売却および活用事例をご紹介します。
※実際の不動産や関係者の特定を避けるため、事例をもとに内容は編集を施しています。
なお、事例のご紹介に先立ち、以下のポイントに注意して読み進められてください。
- どの不動産会社に売却を依頼するかを決めるため、不動産会社を選ぶ基準はどのようなものか
- 不動産が相続財産であるとき、知っておくべき知識はどのようなものか
1.熊本市にお住まいのB様が、「相続した築48年の実家(一戸建て)を不動産会社に買取してもらった事例」
最初にご紹介するのは、相続したご実家の売却成功事例です。B様が初めて経験した不動産売却の課題と解決方法をご確認ください。
お客様の相談内容
B様が売却したい不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
売却したい不動産の概要は以下のとおりです。
所在地 | 熊本市東区尾ノ上 | 種別 | 一戸建て |
---|---|---|---|
建物面積 | 110m2 | 土地面積 | 200m2 |
築年数 | 48年 | 成約価格 | 900万円 |
間取り | 4LDK | - | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
熊本市在住の60代のB様は、お母様が亡くなり一戸建てを相続しました。自身は持ち家に住んでおり、相続した家を売却したいと考えるも、不動産売却に関する知識がありません。
解決したいトラブル・課題
課題:相続と 不動産売却に関する知識がないので、相続した実家の売却を不動産会社にすべて任せたい
B様は相続した一戸建てを売却したいと考えていました。その理由は2つあります。
1つ目は、B様はすでにご自宅を保有しており、一戸建てを自分が利用する必要性がなかったこと。
2つ目は、相続はおろか不動産の賃貸転用や維持管理についての知識や経験もないため、リスクや手間を負うことなく手を離れたいと考えていたからです。
相談する不動産会社の探し方・選び方
B様が不動産会社選びで重視したのは、相続に造詣のある不動産会社であることでした。
いくつかの不動産会社を検索し、実際に相談をして不動産会社を選んだそうです。
B様の「トラブル・課題」の解決方法
B様が抱えていた課題は、不動産および相続に関する知識がなかったことです。
なぜなら、相続による所有権の取得は、購入による取得と比べて手続きが根本的に異なるからです。
1.不動産相続の際の手続き
不動産を相続するにあたって、相続が発生してから相続登記が完了するまでのプロセスを以下のようにまとめました。
相続発生から登記完了に至るプロセスは以下のとおりです。
1. 相続財産の調査 | 最初に相続財産を特定することが重要です。相続財産に不動産があるときは、この段階で不動産会社に査定を依頼しておくことも必要です。 |
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2. 相続人の確定 | 戸籍を収集するなどして相続人を確定します。相続人が確定しないと、遺産分割協議に入ることができないからです。相続人の確定には弁護士や司法書士などの専門家に相談することも良案です。 |
3. 遺産分割協議の実施 | 相続人間で遺産分割の協議を行います。遺産分割協議で気をつけたいのは、①相続人全員が参加する必要があることと、②協議の結果を書面に残すことの2点です。 |
4. 遺産分割協議書の作成 | 遺産分割協議が整ったら、書面に協議結果を残します。このとき作成する書面のことを遺産分割協議書といいます。内容に誤りがあってはいけませんので、専門家に作成を依頼することをお勧めします。 |
5. 相続財産の分割(相続登記の実施) | 協議書の内容に基づいて、相続財産を分割します。相続財産のなかに不動産があるときは、相続登記を法務局へ申請します。相続登記が完了すると、不動産に関する相続登記手続きは完了です。 |
出典:法務省 「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」を改変
相続財産に不動産が含まれているときは、相続発生時から不動産会社との関係性を深める必要があります。B様は相続発生のタイミングから当社にご相談をいただいていたほか、単独で不動産を相続することが早期に決定していました。そのため、販売活動はB様の意向を汲んだ提案をしてくれた会社に依頼することにしました。
2. 結果
B様の意向であるリスクがなく手間がかからない売却方法として、買取を提案したところ応諾。無事B様は相続した不動産をノーリスクで早期現金化することに成功しました。
2.熊本市にお住まいのS様が、「熊本市で相続したマンションを売却し、均等に分けた事例」
次にご紹介するのは、兄弟でマンションを相続することになったS様の事例です。物理的に分割できない不動産を均等に分けた貴重な成功事例です。
お客様の相談内容
S様が売却したい不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
売却したい不動産の概要は以下のとおりです。
所在地 | 熊本市中央区本山町 | 種別 | マンション(一室) |
---|---|---|---|
建物面積 | 85m2 | 土地面積 | - |
築年数 | 33年 | 成約価格 | 2,000万円 |
間取り | 3LDK | - | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
熊本市内に在住する50代のS様とお兄様が、お父様が住んでいたマンションを相続。それぞれ持ち家に住んでおり相続したマンションを利用する予定はありません。そのため、マンションを均等に分けて相続したいと考えていました。
解決したいトラブル・課題
課題:相続したマンションを、兄弟で均等に分けて相続したい。
本件における解決すべきポイントは、「不動産を遺産分割する方法」です。
物理的に分割できない不動産を遺産分割することができるかが、解決のカギといえます。
相談する不動産会社の探し方・選び方
S様がサポートをお願いしたい不動産会社を探すときの重要ポイントは、提案力だったそうです。
実績はもちろんのこと、円満な相続の解決のため提案が欲しかったとのことでした。
S様の「トラブル・課題」の解決方法
S様の課題解決策は不動産を均等に分割する方法を提示することです。
分割できない不動産を分割する方法を知ることは、相続、とりわけ遺産分割協議では非常に重要です。なぜなら、遺産分割協議で複数の方法を提案することで、円満に分割協議を進めることができるからです。
不動産を遺産分割する方法
不動産を遺産分割する方法は以下のとおりです 。
1. 不動産を物理的に分割する「現物分割」 | 文字通り、不動産を「現物」のまま「分割」する方法です。現物分割は土地であれば分筆が可能ですが、建物のときは分割できないことがデメリットです。 |
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2. 不動産を相続する代わりにお金を払う「代償分割」 | 不動産を相続した人が他の相続人に対して法定相続割合に基づいてお金を払う方法です。公平ですが、不動産の価格設定によっては協議がまとまらないことも考えられます。 さらには、不動産を相続する人に代償金を支払う資力も求められます。 |
3. 不動産を売ったお金を分割する「換価分割」 | 不動産を売却し、売却して得たお金を分け合う方法が「換価分割」です。この方法も公平性にメリットがあります。しかし、売却時期がよめないほか、売却価格によっては手残りが少ないこともあるため、不動産会社の売却力を見極めることも必要です。 |
4. 不動産を相続人で持ち合う「共有」 | 不動産を1人ではなく複数の相続人で持ち合うのが「共有」です。共有は均等な分割方法のように思われますが、維持管理や売却において自由度が下がるため、柔軟性に欠けることがデメリットです。 |
さまざまな分割方法を紹介したうえで、当社は「換価分割」が最良と判断しました。換価分割を提案した理由は、兄弟の人間関係が良好であることと、相続不動産がマンションであることからです。
熊本市内での販売実績と、多様な分割方法から最善の方法を提案してくれた不動産会社で売却活動を依頼することになったそうです。
2.結果
S様とお兄様の双方が満足する金額でマンションを売却することができ、収益と費用をきれいに分割して無事に遺産分割が完了しました。
3.熊本市にお住まいのO様が、「実家のマンションを、遺言書に沿って相続した事例」
最後にご紹介するのは、遺言書に基づいてマンションを相続した事例です。遺言は被相続人の最後の意思ですので尊重して話を進めたいところです。
お客様の相談内容
O様たちが相続する不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
相続する不動産の概要は以下のとおりです。
所在地 | 熊本市中央区新大江 | 種別 | マンション(一室) |
---|---|---|---|
建物面積 | 90m2 | 土地面積 | - |
築年数 | 36年 | 成約価格 | 1,200万円 |
間取り | 4LDK | - | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
熊本市在住の50代のO様は、お父様が亡くなりご実家のマンションを相続することに。O様は3人姉妹の長女であり、全員が遺言書に従って相続したいと考えていました。
解決したいトラブル・課題
課題:実家のマンションを遺言書通りに姉妹で均等に相続したい。
O様たちは全員が遺言書どおり「均等な相続」を希望されています。そのため、被相続人の意思と相続人たちの意思が合致する「均等な相続」を実現する一点に集中してサポートしました。
相談する不動産会社の探し方・選び方
O様たちが相続の実現に向けて不動産会社を探すときのポイントは以下のようなものです。
- 相続問題に解決力がある不動産会社であること
- 3姉妹が揃う日時が限られていたため、仕事が終わってから相談できる不動産会社であること
- 相続人と被相続人のどちらの意向も汲んでくれる真摯な営業担当者であること
O様の「トラブル・課題」の解決方法
O様たちのケースではトラブルや課題はなく、相続人と被相続人の意向を汲む相続を実現する目標が明確です。しかし、遺言書の効力や法的な意味合いを理解いただくことで、より納得感のある相続ができると考えました。なぜなら、相続や遺言の理解を深めることで、あとあとのトラブルを防ぎ、良い姉妹関係が継続できると感じたからです。
1. 遺言書どおりに不動産を均等に相続する際の流れ
遺言書どおりに不動産を均等に相続する流れは以下のとおりです。
1. 遺言書の種類を確認する | 遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類が存在しています。遺言書の種類によって対応が変わります。 |
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2-1. 自筆証書遺言のとき | 自筆証書遺言のときは開封せずに「検認」を行います。検認とは家庭裁判所で遺言書の内容を確認する作業のことです。 |
2-2. 公正証書遺言のとき | 公正証書遺言のときは、検認は不要です。 |
3. 遺産分割協議をすることもできる | 相続人が全員賛成すれば、被相続人の意思に反して異なる遺産分割協議をすることも可能です。 |
4. 遺言書や分割協議書の内容に基づき遺産を分割する | 遺言書や遺産分割協議書の内容に沿って、遺産を分割します。 |
出典:政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】」より
遺言書が存在するときは、相続人の意思を確認することが重要です。
今回のケースでは相続人全員が遺言書の内容に賛同しているため、売却に向けた話し合いに障害はなさそうです。
2. 結果
O様たちのご意向どおり、遺言書の内容に沿って遺産分割することになりました。
遺産分割の方法は、金額と売却スケジュールの観点から換価分割の方法を採用したそうです。
おおむねのスケジュールどおりの売却することができ、お喜びいただけました。