相続した不動産の処分を考えるとき、押さえておきたいのは税金に関する知識です。なぜなら不動産の売却と税金には切っても切れない関係があり、不動産を保有しているだけで固定資産税が、売却すると譲渡所得に対する税金がかかるからです。
これら税金のことは不動産を保有していないとわからないものです。そこで、今回は相続した不動産を処分するにあたって税金の問題をクリアした事例を紹介します。
不動産を相続することは、税金の悩みを抱えることと同義です。ぜひ最後までお読みいただき、不動産に関係する税金のことを学び、相続や不動産の処分に備えましょう。
相続した不動産を売却する事例は増加していますが、必ずしもスムーズに売却できるわけではありません。とりわけ、今回のテーマである税金に関する悩みによって不動産の処分への一歩を踏み出せない人は少なくありません。
今回も熊本市内での税金に関する悩みを解決した事例を3つ紹介します。なお、個人や不動産の特定を避けるため、詳細に関する情報公開は差し控えさせていただきます。
1.熊本市にお住まいのY様が、「ご実家を売却するタイミングとして、相続前・後のどちらが税制面で有利か相談した事例」
不動産を相続することが明らかで売却の意向が固まっているときは、相続の前と後のいずれかで売却するかそのタイミングが重要です。なぜなら、不動産を相続する前後で売却における税制面に違いがあるからです。
この事例では相続前後において不動産売却に関する税制面の違いを知ることができます。
お客様の相談内容
Y様が相続した不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
Y様が売却したい不動産の概要は以下のとおりです。
所在地 | 熊本市南区城南町宮地 | 種別 | 一戸建て |
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建物面積 | 115㎡ | 土地面積 | 200㎡ |
築年数 | 43年 | 成約価格 | 400万円 |
間取り | 4LDK | - | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
熊本市にお住まいの50代のY様は、お父様が特別養護老人ホームに入所したため、実家の処分を考えています。お父様のご存命中に売却するか、遺産相続後に売却するかについて専門家の助言を求めていました。
解決したいトラブル・課題
Y様が解決すべき課題は、相続前後のどちらで売却するほうが有利かを判断することです。相続前後でかかる税金が異なるため、不利な条件での売却は避けたいところです。
相談する不動産会社の探し方・選び方
Y様が悩んでいるポイントである「相続前後の税制面の仕組みを正しく把握している不動産会社」は外せない条件です。一見当たり前のことのように感じられますが、全ての不動産会社が不動産に関する売却に精通しているわけではありません。
特に、税制面の悩みを度外視して売却を急がせることで、自社の売上を優先する不動産会社があることも否定できません。知識面や士業との連携が取れていることはもちろんですが、意向を汲んでくれる不動産会社を選ぶことが重要です。
Y様の「トラブル・課題」の解決方法
Y様が心配する悩みを解決するためには、不動産の状況を正しく把握し、相続前後で売却したときにかかる税金がどうなるかを高い再限度で比較検討することが重要です。
1.相続前に実家を売却したときの税制上の優遇
相続前に不動産を売却したときに享受することができる税制上の優遇は以下のとおりです。
1. 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 |
自宅を売却したときは、自宅を売却した売却益から3,000万円までは非課税になる特例です。 熊本市内にある一般的な一戸建てであれば、この特例を活用することでほぼ売却益に税金がかかることを回避することができます。 出典:国税庁 「No.3302 マイホームを売ったときの特例」より |
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2. 特定の居住用財産の買換えの特例 |
令和7年12月31日までに古い家を売却し新しい家を買った場合、古い家の売却で損失が出たときに、その損失を他の収入(給与や事業収入など)から差し引くことができる特例です。さらに、その年に差し引ききれなかった損失は、翌年から3年間にわたって差し引くことができます。 出典:国税庁 「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」 |
3. マイホームを売ったときの軽減税率の特例 |
自宅を売却したときに特定の条件を満たすとき、通常よりも低い税率で長期譲渡所得税を計算する特例です。 出典:国税庁 「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」 |
2.相続後に実家を売却したときの税制上の優遇
相続後に不動産を売却したときに享受できる税制上の優遇は以下のとおりです。
1. 小規模宅地等の特例 |
個人が相続などで取得した不動産が、被相続人やその親族が住んでいたり事業に使っていたりした土地であるとき、一定の条件を満たせばその土地の一部の相続税を減額できる特例です。 なお、被相続人が居住していた土地であれば、最大80%の相続税を減額することができます。 出典:国税庁 「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」 |
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2. 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 |
相続税を支払って取得した土地や建物を一定期間内に売却する場合、支払った相続税の一部を売却資産の取得費に加えることができる特例です。 取得費に加算できる金額には複雑な計算が必要ですが、相続税を支払っているときは覚えておきたい制度です。 出典:国税庁 「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 |
3. 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例 |
相続や遺贈で取得した自宅やその土地を特定の条件で売却すると、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる特例です。
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3.結果
Y様は信頼できる不動産会社を選び、自宅の売却想定額・そのほかの相続財産・特例を総合的に判断することができ、その結果として生前に売却することを選択しました。相続後に売却したときと比べてかなりの節税につながったと喜ばれていたそうです。
2.東京都にお住まいのK様が、「相続した熊本市の実家の固定資産税の負担をなくすために売却した事例」
不動産にかかる税金といえば固定資産税を忘れてはいけません。住んでいても空き家でも必ず発生する固定資産税問題は、相続した不動産で必ず押さえておきたいポイントです。
次に紹介するのは、固定資産税負担を回避するために売却を検討した事例です。
お客様の相談内容
K様が売却したい不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
売却したい不動産の概要は以下のとおりです。
所在地 | 熊本市西区花園 | 種別 | 一戸建て |
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建物面積 | 120㎡ | 土地面積 | 200㎡超 |
築年数 | 51年 | 成約価格 | 800万円 |
間取り | 6DK | - | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
東京都にお住まいの40代のK様は、お母様の逝去に伴い、熊本市の実家の一戸建てを相続しました。K様は大学卒業後、就職を機に東京に移り住み、実家に戻る予定はありません。
解決したいトラブル・課題
K様は自分が決して住むことのない不動産の固定資産税を払い続けることに不安を抱えています。そのため、固定資産税に関する正しい知識をもって売却が正しい選択かどうかを判断する必要があります。
相談する不動産会社の探し方・選び方
K様の課題を解決できる不動産会社の特徴は以下のようなものです。
- 売主が遠方であるため、売却したい不動産の近くで事業を営んでいる
- 相続問題に詳しい
- 売却実績が豊富に存在している
K様の「トラブル・課題」の解決方法
K様の不安を解消するためには、固定資産税の税制や特例を理解することが重要です。相続した不動産が空き家であるため、維持管理の必要性・売却の有効性を知ることで適切な判断ができるでしょう。
1.空き家にかかる固定資産税
固定資産税は自分が居住していても、誰も住んでいなくても必ず課せられる税金です。そのため、空き家だからといって税金が免除されたり軽減されたりすることはありません。
なお、固定資産税は以下の計算方法で求めることが可能です。
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%~1.6%(自治体により異なる標準税率)
そのほか、固定資産税で知っておきたいこととして、土地の上に建物があるときは土地の固定資産税が最大6分の1になることです。しかし、土地の固定資産税が減免される特例が空き家問題の温床になっている事実はあまり知られていません。とりわけ、K様のような相続した空き家ではこの特例があることにより空き家の維持管理や利活用を停滞させる要因になっているのです。
2.特定空き家にかかる固定資産税
「特定空き家」とは、適切に維持管理がされていないため、近隣住民や前面道路を往来する人たちに迷惑がかかりうる空き家のことを指し、自治体が所有者へ通知の上設定するものです。もしも特定空き家に指定されてしまうと、上述した土地の固定資産税が減免される特例が適用されなくなります。簡単にいえば、土地の固定資産税が6倍に跳ね上がることになるのです。
空き家問題は社会全体として取り組むべき課題です。なぜなら、以下のような問題を抱えているからです。
- 地域への悪影響(治安の悪化や荒廃による影響)
- 開発遅延(一体として土地開発を行えないため、社会や経済へ悪影響をおよぼす)
このような諸問題を解決するためには空き家の適切な維持管理・売却活動を促進する必要があります。そのための手段として特定空き家に指定されたときは、土地の固定資産税減免をはく奪する仕組みができたのです。
K様のように遠方で維持管理が行き届かない空き家を保有すると、こういったリスクが存在することは把握しておくべきでしょう。
3.更地にかかる固定資産税
建物の荒廃が土地の固定資産税アップになるのであれば、建物を解体して更地にすればよいと考えるかもしれません。空き家問題の解決という意味では正解ですが、固定資産税の観点から見れば必ずしも正解とは言えません。
なぜなら、更地にかかる固定資産税には減免措置がないからです。つまり、更地にすることで建物の固定資産税は一切かからなくなりますが、土地の固定資産税は建物が存在していたときの6倍になります。
更地にすると空き家問題の解消という意味では一歩前進した印象ですが、固定資産税を見ると大きなインパクトはないといえるでしょう。
4.結果
さまざまな選択肢を検討し、維持管理を委託する費用・固定資産税のシミュレーションを重ねた結果、K様は不動産を売却することにしました。遠方にお住まいで利用する予定がない人や固定資産税が心配な人には妥当な選択肢といえるでしょう。
3.大阪にお住まいのJ様が、「税金の滞納により差し押さえられていた熊本市の実家を相続し売却した事例」
最後は、「税金の滞納により相続した不動産が差し押さえられていた」という事例です。税金の未払いや差し押さえなど、あまり身近に起こるものではありません。
この事例を参考にして、不動産の差し押さえやその後の対応を学んでおきましょう。
お客様の相談内容
J様が相続する不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
相続する不動産の概要は以下のとおりです。
所在地 | 熊本市西区春日 | 種別 | マンション |
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建物面積 | 65㎡ | 土地面積 | - |
築年数 | 12年 | 成約価格 | 2,300万円 |
間取り | 2LDK | - | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
大阪に住む50代のJ様は、昨年お父様が逝去し、実家のマンションを相続しました。J様はマンションを賃貸に出すことも考えましたが、大阪と熊本が遠いため、売却を検討しています。しかし、相続手続き中に、お父様が約100万円の税金を滞納していたため、マンションが差し押さえられていることが判明しました。
解決したいトラブル・課題
J様が向き合うべき問題は、差し押さえられていた相続不動産に対する対応です。どのような対応方法があり、それら対応方法を適切に見極めるポイントを押さえておくことが重要です。
相談する不動産会社の探し方・選び方
相続不動産が差し押さえられていたとき、相談する不動産会社選びは慎重に行うべきです。なぜなら、不動産会社の意見や能力によって判断を誤る可能性があるからです。
- 権利関係に強く、弁護士のリーガルチェックを適切に行える不動産会社
- 不動産の市場価値を適切に査定できる不動産会社
- 相続問題に造詣のある不動産会社
これらの特徴を押さえつつ、ホームページや訪問によって信頼できる不動産会社を見つけるとよいでしょう。
J様の「トラブル・課題」の解決方法
J様の抱える課題を解決するには、専門性・スピード感のある対応・不動産の適切な目利きが欠かせません。なぜなら、この事例は一般的な不動産売却スキームが通用しないからです。
この事例の特殊性は以下のとおりです。
- 差し押さえられた不動産は自由に売却することができない
- 売却金額よりも税金滞納額が大きいときは相続放棄を選択するが、3ヶ月以内にする必要がある
- 売却を目標に進めるときであっても、資金計画や手続きを綿密に行うことが求められる
これらを踏まえ、相続した不動産が差し押さえられていたときの対応方法や判断基準を解説します。
1.相続した不動産が差押物件であったときの対処法
相続した不動産が差し押さえられていたときの対応方法と手順は以下のとおりです。ここでは主に売却を前提として解説を進めます。もちろん、相続不動産は賃貸利用したり、更地にして駐車場にしたりとさまざまな利活用の方法があります。相続不動産の利活用についてお悩みの人は、相続不動産を専門に取り扱っている不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
1. 滞納している税金や返済額を確認する | 最初に行うべきことは、滞納している金額と相手先を把握することです。 不動産の登記簿謄本を確認すれば、誰が何の権利に基づいて差し押さえをしているのかを知ることができます。 |
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2. 不動産を売却したときの想定金額を知る |
滞納額が把握できたら、不動産をいくらで売却可能かを調べます。 調査は自分でもできますが、この時点で不動産会社を見つけ査定を依頼するのがよいでしょう。具体的な金額を知ることができるほか、ここから先の手続きを伴走してくれるからです。 |
3. 滞納額と売却金額から相続放棄するか売却するかを判断する | 滞納額と売却可能金額を見比べ、売却して利益が出そうであれば売却を、損失が残りそうであれば相続放棄をするかの判断をします。滞納額の確認や売却査定額の見極めが不十分であれば、この判断を見誤ることになりますので、注意が必要です。 |
4-1. 相続放棄を行う |
滞納額が売却可能額よりも大きいときは、勇気をもって相続放棄をすることも必要です。 もちろん思い入れのある土地や建物ですから手元に残すことも可能です。いずれにしても、自分の生活や不動産の利活用の可能性などを専門家とよく話し合い判断しましょう。 |
4-2. 売却を行う前にしておきたいこと |
売却可能額が滞納額を上回るときは、売却に向けて動きます。 なお、滞納金を全額完済すると登記簿から差し押さえが抹消されます。こうなれば晴れて自由に売却することが可能になります。 |
5. 売却活動を行う | 差し押さえが解除されたら本格的に売却活動を始めましょう。 |
2.結果
J様は滞納額が100万円と比較的少額であったため、相続手続きを行い、滞納額を完済したうえでマンションを売却することにしました。JR熊本駅徒歩圏内という好立地も追い風となり、納得できる高額での取引にJ様は大喜びです。